(著)おげれつたなか
@かんちゃん本人による解題
「殴ったらスッキリしたから」by『ほどける怪物』
弓と付き合い始めたのは高校時代から
弓を殴りだしたのは卒業して働き始めてから
もっと具体的には「毎日しんどくてイライラしてどうしようも無い時」に(142頁)
はじめて弓を殴った。そしてスッキリした
つまりブラック企業でモロモロになった八つ当たりとして弓を殴った
というのが、かんちゃんの言い分
この発言の底には『だから 俺は 悪くない』が爆音で響いているのは言うまでもない
これだと何の面白みも無いので別の理由を考えたいと思います
@弓にとっての「かんちゃん」
自分について詮索してこなくて
「マジおもしれぇ」くて「一緒にいて飽ねー」人
そして「いつ見ても笑って」る人
自分の顔の傷を見ても笑っていた人
弓の傷に別の解釈を与えた人
@傷の名は
辛い体験や惨めな思い出に別の見方を提供してくれる人
そんな人と出会えれば人生は確実に変わる
みんなが心配したり同情したりする傷を
かんちゃんは躊躇なく掴んだ
そして「かっけー」と褒めた
真山がつけた可哀想な傷は
かんちゃんのおかげで「かっけー」傷に変わった
弓にとって、かんちゃんとの出会いは一時的には救いに成っていた
そして
かんちゃんにとって、弓との出会いは一生物の呪いに成って行く
@『錆びた夜でも恋は囁く』におけるかんちゃん
漫画内でのかんちゃんの役割は送る人
弓をバイト先に送り
弓に拳を送り
ついには真山の元に弓を送る
何かを残すということが生来出来ない人
だから秀那はかんちゃんにカメラを送る
残せないかんちゃんが何かを残せるように
@かんちゃんはなぜ弓を殴るのか
殴ったらスッキリしたからでは無い
傷を残したいからでは無い
送る呪いにかかっているかんちゃんが本当に残したがっているのは
思い出 です
かんちゃんが欲しがっているのはイケメンサンドバックではなくて
『弓を殴った思い出』です
劇中の描写を見る限り、かんちゃんは弓の傷の原因を知らないと思います
聞く気も無かったと思います
それが間違いでした
傷の理由を聞くべきだったのです
そうすれば自分が何にイライラして、どうしようもなくなっているのかがわかったはずです
かんちゃんはずっと顔の傷に嫉妬していたのです
つまり無意識に『真山と弓の思い出』に嫉妬していたのです
だから新しい傷で真山との思い出を塗りつぶしたくて
毎日せっせと殴っていたのです
それでも新しい傷(かんちゃん)は古い傷(真山)にとってかわることは無かったのです
なぜなら弓に思い出を残すには、まずは弓と離れなければならないからです
だから弓と一緒に居る限りはかんちゃんは延々と殴り続けるしか無いのです
痛みが傷になるには時間が必要なのです
@かんちゃんが僕らに伝えたかったこと
・ハッキリしない欲望は(最愛の他人の)身を滅ぼす
・手放すことでしか残せないものもある
・人の思い出は上書きできない
やっぱり、おげれつたなか先生はすげえわ
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